ブラジルの劣悪サトウキビ農園の運営企業にビル・クリントン前大統領が出資

Clinton link in Brazil ethanol probe(AP)
がそのように報じています。

A team from Brazil's Labor Ministry found "degrading" living conditions for 133 sugarcane workers employed by an ethanol company whose investors include former President Clinton and other high-profile financial players.
At five sites inspected, workers "complained they were suffering from hunger and cold, and all of the locations were overcrowded and with terrible sanitary conditions," according to a statement issued Friday by Jaqueline Carrijo, who led the inspections last month.
The target of the probe, Brazil Renewable Energy Co., known as Brenco, apologized over the weekend and said it is fixing the problems at its rural operations, which turn sugarcane into ethanol.
Clinton's connection is via an investment in Brenco by The Yucaipa Cos., a U.S.-based fund in which Clinton was a senior advisor until last year. His investment in Brenco is valued between $15,001 and $50,000, according to a financial dislosure report submitted last year by his wife, presidential candidate Hillary Rodham Clinton.(強調はatomon)

この報道によると、ブラジル労働省が新エネルギー系企業Brenco(Brazil Renewable Energy Co.)の運営するエタノール精製用サトウキビ農園で労働環境が著しく不衛生かつ貧相であるとして、立ち入り調査を実施。このBrencoにはアメリカ民主党系の大物ロン・バーク氏がトップの投資ファンドYucaipaが出資しており、さらにその出資者にビル・クリントン氏や財界要人が名を連ねている、とのこと。
YucaipaのBrencoへの出資比率は2・8%で、このファンドの顧問を昨年まで務めていたクリントン(夫)氏の投資益は1万5000ドルから5万ドルの間。クリントン氏の報道担当者は「出資額は小さいものであり、出資に当たっては『最高の労働基準で運営する』と聞かされていた」と説明している。このBrencoへは、ほかにもサン・マイクロシステムズ社の共同創設者であるビノッド・コースラ氏、AOL設立者のスティーブン・ケース氏、ハリウッドプロデューサーのスティーブン・ビング氏、そして元世界銀行総裁のジェームズ・ウォルフェンソン氏が出資している。
Brenco側は調査対象となった多くの労働者たちの住環境に問題があったことを認め、早急に調査・改善手段をとっていると説明しているようです。
クリントン氏の名前もそうですけど、この米ファンドが思いっきり民主党系である事実が大切な気がします。労働問題には共和党より敏感であるべき民主党ですが、南北問題の次元では両者とも大差ない、ということかもしれませんね。


おりしも、小池百合子防衛大臣(元環境大臣)が「バイオエタノールの開発を中止すべき」毎日Jp.)とぶち上げて話題になっていますが、確かにサトウキビやトウモロコシから精製されるバイオエタノールは様々な問題を指摘されていますよね。
上に書いたような労働問題でも、すでに日経などのメディアが報じています。

◆ブラジルでエタノール価格急落――サトウキビで労働問題も浮上(市場の話題)
2007/08/18, 日本経済新聞
 バイオエタノール代替エネルギーとして注目されるなか、ブラジルでエタノールの卸売価格が急落している。
 応用経済先端研究センターの発表によると、エタノール(加水アルコール)一リットルあたりの卸売価格は、今年三月末時点で約〇・九六レアル(一レアル=約六十円)だったのが八月十日現在、約〇・五八レアルと三九・七%下落。四月ごろから始まった原料のサトウキビの収穫期がピークを迎え、生産過剰が顕著になっていることが背景にある。
 今年度のブラジル国内のエタノール生産量は、サトウキビの栽培面積の拡大や品種改良で昨年度に比べ約一四%増の二百億リットルに達する見込み。国際相場の上昇で、生産業者もサトウキビから作る製造比率を砂糖よりエタノール向けに大幅にシフトさせていることも増産に拍車をかけている。
 値下がりに加え、新たな問題も浮上しつつある。サトウキビの刈り取りを行う季節労働者の過酷な労働実態が問題化。なかには一日に十二トン以上も収穫することを条件に「奴隷のような」契約を結ばせたり、児童就労をさせたりする業者も出現した。国営石油会社(ペトロブラス)はこうした悪徳業者からの買い取りをしない姿勢を打ち出し、対応に躍起になっている。
 一方、同国政府は今年三月のブッシュ大統領のブラジル訪問の際に批准した米国とのエタノール共通市場創設に向けた準備も迫られている。先月、米政府高官八人が訪問し、エタノール取引の活性化策や、第三国での生産への技術移転策を協議した。
 INMETRO(国家度量衡・規格・工業品質院)は今年末までに、国内で生産されるエタノールに含まれる不純物の割合などの品質基準を策定する見通し。今後、エタノールの価格安定に向け、ブラジル政府は生産拡大と品質の保持、さらに労働環境の改善への努力が試される。
サンパウロ=岩城聡)

以下のリンクも、なかなか面白いです。
エタノールの負の側面=食糧インフレに環境破壊ニッケイ新聞←ブラジル現地の日本語メディアのようです)
ルポ記事:エタノール生産の過酷な労働スウェーデンの今)


ニッケイ新聞の指摘にもあるように、ブラジルでの急速なサトウキビ生産拡大は、労働問題以外にもサトウキビ農園周辺の環境破壊も招いています。
ブラジル政府 サトウキビのアマゾン等侵略の禁止へ バイオエタノール輸出への悪影響を恐れる(農業情報研究所)
現在のバイオ燃料は持続不能 第二世代燃料にかけるとEU環境担当委員(農業情報研究所)


私たちの生活の中でも、サトウキビやトウモロコシの価格が高騰が懸念されたりしていますよね。
アメリカ政財界の人々は、サブプライム問題を見ればわかるように、当事者たちのリスクを回避する手段を確保したら割と無謀なことを平気でやる傾向がある気がします。この新エネルギービジネスも、「フロンティア」といえば聞こえはいいけど投機的な対象になりすぎて、ややバブルに近い印象を受けますね。
こんなアメリカや南米の動向などは放っておいて、日本には本当の意味で持続可能な新エネルギーの開発を進めていってほしいものだと思います。