高い空は飛べないけれど

夢を描いて 高い空見れば
とどく気がして よけいに哀しくて (おじゃる丸オープニング「詠人」)

「おじゃる丸」原案・犬丸りんさん、飛び降り自殺か(Yomiuri Online)

NHKの人気アニメ「おじゃる丸」の原案者で知られる女性イラストレーターの犬丸りんさん(48)が、東京都武蔵野市吉祥寺本町の自宅マンションの屋上から転落して死亡していたことが11日、わかった。仕事に悩んでいるという内容の遺書が残されていたことから、警視庁武蔵野署は飛び降り自殺と見ている。

 調べによると、犬丸さんは10日午後1時30分ごろ、14階建ての自宅マンションの屋上から、隣にある5階建てのビルに転落し、死亡した。

 室内にあった母親あての遺書には「仕事ができない」などと書かれていたという。


おじゃる丸Wikipedia

私は最初期のおじゃる丸しか見てないんだけど、北島三郎の歌うオープニング曲が好きでCDをレンタルしたことがある。
一番初めにおじゃる丸の声をやっていた声優さんがとてもうまく雰囲気を出してた。だから、彼女が新しい人と交代してから、だんだんと見なくなってしまった。


原作者の方に何があったのか、報道以上のことをうかがい知ることができない。
今素朴に思うのは、この人自身どれぐらい「まったり」(この作品によく出てくる言葉)だったのかな、ということだ。私たち視聴者は、おじゃる丸を見ることでほーっと一息つける。けど、原作者にとってはどうだったんだろう。


「まったり」を含めて、「人生を明るく、笑って」といった基調の漫画の作者の中には、意外と苦労してる方がいる気がする。「サザエさん」の長谷川町子さんも十二指腸潰瘍に苦しめられているし、「のんびり」がこれほど似合う人もいないと思われる川原泉さんも胃を痛めている。もちろん、ジャンルにこだわらず漫画というクリエイティブな仕事であれば、そもそも等しくこうした辛苦がつき物なのかもしれない。
だが、「笑い」が主体の漫画の場合、作者本人と作品の「理念と現実」が、ことのほか乖離しがちではないのか。つまり、自身は地を這いながら「高い空」を描き続けなければならない、正直に地を這っている自分を吐露できればいいのに、過去の作風とファンの支持を思えば続けざるを得ない……。こうした創作姿勢は、もしかして格別な苦労ではないのか。


犬丸さんの話ではなくて恐縮だけれど、川原さんの最新刊「レナード現象には理由がある」を読んだときに、実はこんなことを考えていた。
無理をして明るい、ほんわかした物語展開を書いて読者を喜ばせようとするぐらいなら、自身の暗く苦しい葛藤を正直に書いてもらいたい。そこから作者自身の人生観の更生が図られていく……。確かに昔からの読者は不満かもしれないが、過去の影に現在の創作人生を殉じさせてしまうのは、とても哀しい(犬丸さんがそういう状況だったかどうかは、先も書いたとおりわからないけど)。
この系統の漫画家の方でもしそうしたストレスがあるなら、同人誌でもいいからガス抜きを図ってほしいと思う。