麻生さん、麻生さん

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植民地時代に教育水準向上 麻生外相、台湾に触れ

 麻生太郎外相は4日午後、福岡市で講演し、日本が植民地支配下の台湾の義務教育に力を入れたと指摘した上で「台湾はものすごく教育水準が上がって識字率などが向上したおかげで今極めて教育水準が高い国であるがゆえに、今の時代に追いつけている」と述べた。
 日本と関係の深い地域として台湾に言及する中での発言。
 麻生氏は「これは台湾の偉い方から教えてもらった話で、年配者は全員知っていた。われわれの先輩はやっぱりちゃんとしたことをやっとるなと正直その時思った」と述べた。
 また、当時の日本の政策について「最初にやったのは義務教育。(台湾の家族が)子どもを学校に出したら1日の日当を払う大英断を下した」と強調した。

台湾人に友人がいる人間としては、この発言を看過できない。
内容は正しいだろう。実際、都市インフラ整備を含めこのようなことをしてきたからこそ、現在でも台湾人は日本に好感情を抱いているのだろうし、日本政府がいくら彼らを振り返らなくても興味と好奇心を持ち続けてくれているのだと思う。
しかし、どれほど正確な事実であろうと、感情や情緒を逆なでする発言を人が喜ぶだろうか。今の台湾は意見対立こそあれ、全体としては自主独立の概念を持っており、自分のことは自分で律するプライドを持って生きている。蒋介石以来の国民政府勢力との熾烈な独立闘争を続け、民族自決を勝ち取った今日がある。
麻生外相の発言は、率直に言えば「台湾に施しをしたわが国は偉い」というものだ。事実、その施しは行われ、とても良いものだったので相手もつくづく感謝をしている。しかし、施し主が「あの時私が施しをしたから、今のお前があるんだよな」といつまでも言ってのける姿を、人は「人徳ある態度」と評価するだろうか?


麻生氏の祖父、吉田茂氏もまた舌禍の人だった。けれど、吉田氏は功罪相半ばするとはいえ戦後日本の進路を模索し、後世50年にわたって続く国家像を(良くも悪くも)決定した。それ以外にもサンフランシスコ講和条約調印など、政治的業績を山積みの上にも山積みに積み上げてきた人物だ。
翻って、麻生氏はどうだろう?総務相、外相として一体何をやったのか?私の無知ゆえだろうが、「フロッピー」発言で事務の実態を知らぬ姿に失笑を買い、官僚のスケジュール表を黙々とこなす以外に何をしたのだろう?彼の地位は、彼個人のどのような政治的業績で築かれてきたというのだろう?
吉田氏の場合、数々の暴言や傍若無人な振る舞いも、今は愛すべきエピソードとして語られている。それは、戦時中から憲兵ににらまれてきた硬骨漢ぶりや戦後の豪腕振りが広く認知されているからだ。彼のマイナス部分は彼自身の足跡に吸収され、ともに人物像をより鮮明なものにしている。麻生氏の場合、彼のマイナスを吸収しているのは彼自身の業績ではない。祖父以来の、あるいは実家麻生財閥が作り上げてきた人脈と七光りが麻生氏の背後でハレーションを起こし、彼の負の部分を打ち消しているだけだ。これは、ネットでは悪評嘖々たる安部晋三官房長官にも言えることだが。


麻生氏も直言で知られるなら、こうしたご自身の状況をも率直に認識されるべきだ。そして、口と脳みそがついていれば誰でも語れるレベルの発言をする前に、台湾やアジア、世界各国を(この際、中韓は措こう)訪問し、「日本の外務大臣麻生太郎」と大衆レベルで知られる努力から始められるがいい。そして、顔のある日本、顔のある外務大臣として各国に知られる努力から始められるがいい。国内で「首相候補」としておだてられるだけで気が済むのなら、できるならご実家に戻り、麻生グループの人々の面倒だけを見て余生を過ごしていただきたい。
外務大臣として禄を食むのなら、そしてその執行を責務と思うなら、きちんとした外交戦略を描き、アメリカだの日本だのの継承された人脈のみに頼らず、自ら外交努力をするべきだ。それは、挑発的で安易な言辞を用いなくとも、十分できるはずだ。