Strings

というのは、この映画。
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全編が木製のあやつり人形劇で構成された、仮想世界のファンタジー。王である父が殺害されたと思い込んだ息子が復讐を誓い、旅に出る。そこで見たのは自分の父と王国がなした歴史。破壊と殺戮が繰り返される中で、主人公は権力や軍隊に頼るのではなく、真に進むべき道を見つけていく。
たぶんこの映画の本当の主人公は、全部のキャラクターの頭上にある「操り糸(ストリングス)」だ。それは人の運命や因果といった抽象的なテーマとしてもいえることだが、より具体的な演出技法としても十分出色の機能をもつところにこの映画の面白みがある。劇中では出産と人の死、愛、戦場での大殺戮が描かれるが、そうしたものがすべて無数の「糸」のデリケートな操作で表現されている。むしろ、木彫りのキャラクター達は観客へのリップサービスに近く、本来監督はこの「糸」だけを見せたかったんじゃないかとさえ思える。
つまり、この「糸」は物語のキーコンセプトとして、さらに具体的な映像表現としての意義を持っているのだが、正直なところ前者の掘り下げは少し足りないように感じた。いかにして「糸」から逃れるのか、その解答をこの映画は最後に見せているように思うが、それがどういう意味を持つものなのかはっきりしない。というか、単に私が「彼岸に旅立てば人はみんな自由」といった考えが好きじゃないだけかもしれないけど。
とりあえず、サンダーバードみたいな人形劇、という外見にあまりとらわれず、中身だけをしっかり鑑賞した場合、同じように人間の業を描こうとした「もののけ姫」よりは面白い作品だ。人形劇なのでちょっとほのぼのだけど、割と描写や展開が容赦ないし。