バットマン・ビギンズ

今日公開のバットマン・ビギンズを見てきた。雨だし、平日午後2時半の上映だったけど、さすがに大きめの映画館の半分ぐらいが埋まってたんじゃないかな。
致命的ネタバレをよけて書くと、見終わった第一印象としては「かなりよく作られてるけど、クライマックスがちょっとなあ」という感じ。相変わらず前情報一切なしで見たので設定とか製作意図とかはよくわからんけど、非常に硬派なつくりになっていた。ヒロインはなんか地味だし出番少ないし、敵役もケレン味一切なし。バットモービルにしてからが重装甲車みたいな味気なさ。確かに警察の追及を逃れるならあのごつさの方がリーズナブルではあるし、映画を見ていればそう納得出来る。しかしスタイリッシュさよりもそうした実用性を重視している点に、今回のバットマンの着眼点が出ているように思った。ただクライマックスについては、硬派なら硬派なりにもう少し練った展開のほうがよかった気がする。
あと、前半から中盤にかけて延々続くブルース放浪シーンは、「バットマン」の活躍を見たい観客にとってはどうなんだろう。序盤から徐々に盛り上がりを作っていきたいという意図はわかったんだけど、娯楽作品としての完成度を考えるならもう少しバットマンらしさを前半にも盛り込んだほうがよかった気がする。
こういう、特に前半のことごとくバットマンらしさを欠いた展開を強烈に支えるのは、並み居る名優陣。リーアム・ニーソンゲイリー・オールドマンマイケル・ケインルトガー・ハウアーらの存在感はさすがだと思った。ただ出てくるだけで画面の空気が違う。モーガン・フリーマンは印象的にはあまりインパクトがなかったけど(ジョークのやり取りは面白いが)、あの出番の少なさで存在感をだすためには確かに彼ぐらいの俳優が必要だったかも。主人公役のクリスチャン・ベールは劇中ひたすら顔が引き締まったいい男で、その気迫で強力な脇役人と対峙している感じだった。もちろん、初代バットマンマイケル・キートンのような繊細さとか心理的なアンビバレンツとか、そんな複雑なものは全然ないわけだが。
名優がいなければ、かなりやばい作品になってたことは間違いない。というか、はじめからそれがわかっててこういう俳優の使い方をしたんだろうけど。最初にも書いたけど、今回は「実録バットマン」というような渋いつくりになっているので。
さて、わずかな出番ながら重みがある役をもらった渡辺謙だが、まず腹からしゃべれと。声の深さでクリスチャン・ベールにも及んでないよ。のど声で異様さをだすなら、もうちょっとエキセントリックにやれと。雰囲気が出てたのは、ほんの少しだけかな。役者としてほんと薄っぺらく感じた。ラスト・サムライのときはそれほどでもなかったんだが、今回はほかが凄すぎるせいか。なんか色物って感じで、観客でひとりしわぶきをしている人がいた。あんまりインパクトを与えられなかったんじゃないか。
自分はバットマンが好きなので、学生700円分の元は取ったと思う。ただ、バットマン好き以外に薦めるかといったら、ちょっと微妙だなあ。あ、各名優好きの人には勧めるか。それにしても、この前DVDで見た「キング・アーサー」といい、なんかファンタジー性を取り除いたヒーローものがはやってるのか。