重信房子ってどんな人?

街で見えた虹

この人のことを全然知らないんだけど、短歌集を出したとか

パレスチナわがまほろばの崩れゆく空のみ高しジェニンの町よ

人生に無駄なものなんてない、と言い切るのは簡単だ。
けれど、長い長い流離の果てに彼女が手にしたものは、おそらくはただ一握の砂。しかも母国の砂ではなく、遠い中東の大地のひと掬いだったはず。その現実認知を、彼女は出来ぬまま一生を終えるのではないだろうか。
常識を持ち切れなかった子。人並み以上には頭もよく責任感もあったが、へりくだることの出来なかった子。そんな人間だったのかもしれない。しかしときに、時代は人を選ばない。着々と周囲の環境が整ってしまえば、どのような人間であれこうした状況に飛び込まざる得なくなるかもしれない。
日本では、当時一体何人の男が―もしかして公安の人間も含めて―彼女が自分たちの前を通り過ぎるのを見送ったことだろう。複雑な思い、呼び止められぬ無念を感じながら。たぶん重信さんは、そんなこと一生わからないのだろうね。