昨日のメモでも触れた国連とアメリカの関係だけれども、もうひとつのトピックでは攻守ところを変えている。
Monumental Rip-Off?(ABC)
……この報道によると、厳しい経済制裁下のイラク市民を救済するため96年に始まった国連の人道支援計画に絡んで、プログラムを統括していた事務局次長(undersecretary general)をはじめ複数の国連関係者がイラク側から賄賂を受け取ったとされる。
この計画は「oil-for-food(食料のための石油、石油と食糧交換)計画」と呼ばれ、イラク市民に必要最低限度の生活必需品を購入させるため、限られた量の石油輸出をサポートするもの。しかしアメリカ政府関係者は、この計画に絡んでフセイン元大統領の個人口座におよそ50億ドルにのぼる金の流れがあった証拠があると言い、さらにバグダッドで発見された書類には、この計画に携わった外国人関係者にオイル売買での便宜が図られた形跡があったという。
追い討ちをかけるように、ニューヨークポストはこの記事の中で、シンガポール出身のある事務局次長が部内の昇進に絡んで見返りや性的接待を強要した疑いがもたれていると報じている。
このABCとNYポストのニュースを見て最初に気付くのは、情報のソースのかなりの部分がアメリカサイドから流れている、ということだ。ABCの記事の最後で「これは贈賄のようなもの(意訳)」とコメントしているのはイギリス人のイラク政府アドバイザーだし、NYポストではアメリカ政府御用達・FOXテレビの報道をベースにしている。また、当然どちらのニュースにも「アメリカ政府関係者」が情報を流している。湾岸戦争時もてはやされたオイルまみれの鳥のように、自信に満ちたニュースソースがパートタイマーでないかどうか、私は見守りたいと思う。
むろん、国連は常に清廉潔白であると私は言うつもりはないし、組織としての脆弱性、いい加減さはこれまでにもたびたび指摘されてきたと記憶している。しかしなぜ「今」、これらのニュースがリークされ、アメリカ国内で大きく喧伝されているのか。憶測を交えて考えてみたい。
昨日書いたように、現在アメリカは国連の議場において大きな岐路に立たされている。<削除>それを免れるための決議1487の延長を、アメリカとしてはなんとしても図りたいと考えている。しかし、決議承認のための投票権を持つ周辺諸国の対応は、昨年に比べアメリカに協力的とはいえなくなっている。無論この話題だけではなく、ほかのイラク復興支援関連のあらゆる場面でも、国連に対し有利に立ち回れるきっかけがあるに越したことはないだろう。
この状況下での「報道キャンペーン」であることを考えると、多少複雑な気分になる。実際にイラク支援計画を巡って不明朗なやり取りがあったのかもしれず、関与した人間は当然裁きを受ける必要があるだろう。しかしそれがもしも、「現在」アメリカが行おうとしている不法とおぼしき行為に対し、当然至極の異議を申し立てようとしている国連に過去のスキャンダルを投げつけ、現在の主張ともども国連不信の彼方に葬り去ってしまおうとするものであるならば。もしその仮定が正しいのならば、逆に言えば、それはどれだけ今のアメリカ側に、あらゆる意味でまっとうな正当性がないかを明らかにするものとすらいえないだろうか。
この「oil-for-food scandal」が日本でどのように報道されているのか、私には確かめるすべがない。もしも今更感のある話だったなら、申し訳ない次第です。